コロナ流行の中、いち早い治療法、ワクチンの開発が求められている訳ですが、いずれもデータの裏づけがしっかりしていないと困ったことになります。証明されていない薬を効果があると信じてむやみに飲むのは、アメリカの大統領だけにしていて欲しいものです。
このような薬の効果を証明するのはランダムに患者さんを振り分けて、薬を使ったグループと使わなかったグループを比較して、効果があるかを確かめる方法でやるわけです。その結果をエビデンス(証拠)ともいいます。
しかしながら、漢方薬はこういったエビデンスが比較的少ない薬です。
今でこそ、漢方薬をかなり使用している私ですが、実はもともとは漢方なんて科学的ではないので効果はないと信じていました。エビデンスがすべてで、データがあるかどうかが治療においてはもっとも大切と信じていたのです。
そんな中、当時国立小児病院(現:成育医療センター)アレルギー科に入退院を繰り返していたアトピー性皮膚炎の中学生の女の子がいました。当時はマスコミにより作られた外用ステロイド嫌いのムードからステロイドを使わない治療が流行していました。
本当に重症の方が多く治療に難渋することも多く、そんな中、小児病院のアレルギー科では海水浴療法などあらゆる手を使って治療をしていました。ある日その常連の子が来院しなくなり、数ヶ月して外来にひょっこり顔を出しました。そのとき、びっくりするほど症状が改善していてその訳を聞くと漢方で治ったというのです。
それでも、本当に漢方が効いたのか、自然経過で治ったのか、あるいは漢方と偽って他の薬を飲まされていたのではないかなどと思っていました。
次の漢方との出会いが来るまで、ずっと半信半疑の状態は続いていたのでした。