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2021.08.17更新

 

いよいよデルタ株が猛威をふるっている様子です。東京はすでに医療崩壊していると言われています。

医療崩壊というと「コロナの中等症でも入院できない」というのが頭に浮かぶわけですが、実際には、他の病気の治療も出来ないことも大きな問題です。

 

コロナ急増

 

 

ここに来て、私が小児科医として気にかかるのは今回のデルタ株が小児にどう影響するかです。
以下で懸念点を挙げてみようかと思います。

 

1.小児も感染しやすくなるのか

デルタ株は患者さんが持っているウイルス量がこれまでの株の1000倍以上と言われていますから相当感染力が強いと考えられます。

デルタ株がこれまでの株より小児に感染しやすいかどうかはまだ分かっていません。

しかしながら、全体の感染者数が増えると、割合は低いながらも小児の患者総数も増えてしまいます。

 

実際、アメリカのデータでは小児の患者数が増えて来ていて、9月の新学期をどう迎えるかが大きな議論になっているようです。

これは、アメリカの小児コロナの入院数のグラフで最近急増しているのが分かります。

 

アメリカ増加



2.小児が他人に感染させやすくなるのか

これまでは、小児は「罹りにくく、罹っても軽症、他の人に伝染させる可能性も低い」と考えられていました。実際、感染者の8割以上が家族内感染だったからそのように言われていたのだと思います。
しかしながら、最近、保育園や、学校、塾などでクラスターとも呼べるような大人数の感染が多く報告されているので、集団での子ども同士の感染の広がりもあると考えるのが妥当でしょう。

 

3.小児も重症化するのか

これまで、幸いにも小児は症状が軽いことが多かったわけですが、アメリカでは入院するような症例数も増えているのは事実です。

アメリカ入院

 

年齢層で言うと、特に1歳未満は重症化しやすいことが知られています。

 

4.予防、治療があるのか

ワクチンはアメリカで現在ファイザー社が12歳未満について治験を行っているようですが、秋以降、おそらく年末ぐらいまでにはアメリカでも承認になるという話です。

治療については、コロナに対して承認されている4つの薬のうち、デキサメサゾン(ステロイド剤)とレムデシベル(抗ウイルス剤)は使用できます。
抗体カクテル療法は15歳未満はいまのところ使用が許可されていません。
もう1つの重症肺炎に使用するバリシチニブ(過剰な免疫を抑える免疫抑制剤)も使用できません。
つまり、4つの武器のうち、2つしか使用できないのです。

 

5.後遺症(ロングコビット)やMis-C(当初川崎病に似ていると言われた全身の血管炎)

コロナに感染したあとの後遺症も大人と変わらずあるようです。疲労感が抜けないとか、集中できないとか、体の痛み、嗅覚、味覚がなかなか戻らないなどです。これらは子どもの成長、発達、学習などいろいろな面で問題が大きいと言えます。
 
今のところ、日本ではMis-Cはあまり出ていないようですが、今後は分かりません。

 

6.幼稚園、保育園、学校などが、感染拡大の起点、中継点になる危険性

私が、外来をやっていて感じるのは「胃腸炎は保育園に行っているような小さなお子さんが起点になって家族に広がる」「インフルエンザは学校に行くような比較的年齢の高い小児が起点になって、他の年齢に広がる」ってことです。

これまでは、小児の集団生活から社会への拡散はあまり大きくなかった印象ですが、今後はどうなるのでしょうか。

 


というわけで、心配の種は尽きないわけです。 もうすぐ新学期が始まってしまいます。

 

 

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